最適設計

概要

物理シミュレーションや実験のデータを学習データとして作られる機械学習モデル、あるいは高速で計算可能な1DCAEなどのモデルを対象にして、遺伝アルゴリズムなどの最適化アルゴリズムにより多目的最適化を実施することにより、最適な設計解を探索する技術です.

非現実性的な総当たりのパラメータスタディ

対象モデルの説明変数(条件や設計値など)が多いほど現象は複雑になり、人による探索は困難となります.例えば、説明変数が10個あり、それぞれが5水準の値を取りうる場合、組み合わせの数は5の10乗=9765625通りあるので、1回の予測が0.1秒で可能だとしても、全組み合わせを計算するためには1.8年以上の時間が必要になります.これは現実的ではありません.

アルゴリズムによる最適解探索からイノベーションの創出

そのような状況においても、遺伝アルゴリズムなどの最適化アルゴリズムにより、大幅な時間短縮が可能です.状況に依存しますが、数千通りの計算で実用的な最適解が得られる場合があります.仮に1回の予測に上記と同様に0.1秒かかるとすると、1万回の計算でも17分程度の計算時間です.

すなわち、最適化アルゴリズムを用いると、人では見つけられない設計解が得られる場合があります.これは人の想像を超える設計解が得られることを意味するので、イノベーションにつながりやすくなります(下図参照).

現実的な計算時間にするための準備

最適化アルゴリズムを用いても、数千条件の計算が必要になる場合が多いので、対象モデルの1条件の計算を短時間で実行できるようにしておく必要があります.この点で3D解析の様な詳細物理モデルでは厳しいので、1DCAE(Modelica)か機械学習モデルへの置き換えが必要となる場合が多くなります.1DCAEへの置き換えは精度などの点で難しい場合がありますが、機械学習モデルへはデータがあれば置き換えられます.

Pythonとオープンソースの活用

Pythonとオープンソースのライブラリを用いれば、無料でディープラーニングなどの機械学習モデルの構築および多目的遺伝アルゴリズムなどの最適化アルゴリズムの活用が可能です.その際、ライセンス規約に関しては十分な注意が必要です.

Pythonは初心者でも短期間で習得しやすい言語です.また、Pythonでオブジェクト指向プログラミングを実施することにより、作成したツールを形骸化することなく組織的に活用しやすくなります.

参考

「機械設計」2019年9月号(日刊工業新聞社)

「機械設計」2019年9月号(第63巻 第10号)(2019年8月10日発売)の特集記事の一部に、弊社代表が執筆させていただいた「機構の構想設計 シミュレーションモデル統合と最適化によるイノベーションの促進」が掲載されました。

「組織的イノベーション促進のための機構解析」(RecurDyn Users’ Conference 2019、2019年11月22日)

RecurDyn Users’ Conference 2019において、弊社代表が、メカと電気が複雑に相互作用する小型圧電アクチュエータのモデル化と最適化によりイノベーションにつながった事例を中心に講演をさせていただきました.

昨今、多くのものづくり企業が組織的イノベーションの促進を目指している。機構解析を活用する目的も、機構設計業務におけるイノベーションの促進だといえる。しかし、機構解析を効果的に活用できていない例もある。そのような場合、解析モデル構築より前のプロセスに必要な調査や議論が不足していることがある。本発表では、精密駆動機構を例にして、機構解析を用いる組織的イノベーション促進の方法について考察したい。

概要より

© 2024 ENJYN